GOOD MORNING DREAMER

各種レポート(ライブ、旅行など)、会場ガイド、考察、コラム、他 雑記。主にSHINさんの話題が中心です。

【Review】ぞんび『ぼくらはみんな死んでいる。』

少しばかり新規開拓に手を伸ばしたので、久し振りにアルバムレビューを。

SHINくん目当てで“MICHAEL SPRING JUMPING CIRCUS”、“Zany Zap SUMMIT '17”と2本のイベントライブを観に行きましたが、その両方に出演していたバンド「ぞんび」さん(以下、敬称略)がとても気になったので、今更ながらアルバムを購入して聴いてみました。

ぞんびは楽曲の基本構成が(こういう表現が適切かは分かりませんが)“歌謡曲ロック”とでも言うような感じで、そのバンド名とは裏腹に非常に耳障りの良い音楽を作る印象があります。根底にジャパニーズポップスを感じるあたり、ゴールデンボンバーに似た系譜かも知れません。

歌詞については極力「ぞんび」に寄せようとしているので、全体的に共感を誘うようなものではないのが個人的には残念です。
筆者はどちらかと言うと歌詞に自分の経験を重ねて共感しながら音楽を聴くタイプなのでそう感じましたが、そうでない方は気にならないと思います。
個人的にはそこまで「ぞんび」にこだわらなくても良いんじゃないかなぁ、と思いますが、コンセプトとして打ち出している以上抑えておきたいところなのでしょうか。
コンセプト重視のバンドと考えるとこれで良いのかも知れませんね。

 

ぞんび『ぼくらはみんな死んでいる。』

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2017年1月4日にリリースされたばかりの今作。
1stアルバムにしてベスト的要素のあるアルバムです。
2013年の結成当初からライブで披露してきた楽曲がここぞとばかりに詰まっているので、ベスト的なアルバムと謳っているのも納得がいきます。
その通り、聴いた印象はハズレ曲がないと言うか、このアルバムを手にした人の期待を間違いなく裏切らない作品が詰め込まれています。

このバンドはベースの青井ミドリさんのみがコンポーザーなんですね。非常にセンスの良い楽曲を作るベーシストさんです。
ベーシストがメインコンポーザーを担うと、ベースにギター的要素を持たせるなどベースを必要以上に際立たせる曲を作る方が多い(と言うか、殆どがそう)ですが、ぞんびの全体的な楽曲の印象はベースを表に出すと言うよりはメロ重視に作られているので、ご本人はベーシストと言うよりコンポーザーとしてバンドを演出することに重点を置いて考えているのかも知れません。

タイトルは勿論「ぼくらはみんな生きている」のパロディ。
1stアルバムからいきなりギャグでくるあたり、さすがユークリッド・エージェンシー(笑)。 

01. アンデッド・ヒーロー

ライブでの導入場面で使用しているSE曲です。
打ち込みメインでエレクトロ要素があり、高揚感を煽るつくりになっています。
ちょっとゲーム音楽っぽいですね。

終盤に向けてぐっと盛り上げて、最後は静かに余韻のリフレインで終わります。
この手の曲で最後静かに終わるのは珍しいなぁ、と思いました。

しかし最近はどのバンドさんもSEを作るの巧いですね。
90年代は既存曲(クラシックなど)をOPENING SEとして使用するケースが多かったように思いますが、パソコン周りが整ってDTMソフトを操りやすくなったのも一因かもしれません。

02.  死ねばいいのに。

 zanyzapofficial/ぞんび「死ねばいいのに。」Live PV

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タイトルのインパクトが凄まじいこの曲。
(キラキラが流行り出した頃からそうでもなくなりましたが)V系は「言いにくい闇を代弁してくれる音楽」が多いジャンルですので、ある意味王道でしょうか。

「死んじまえ!!」と言う気分の時に聞くと本当にスカッとします。なかなか私生活でそんなこと言えませんし(笑)。
筆者は今までそんな気分のときにはゴールデンボンバーの『SHINE』を聴いていましたが、最近はこちらにシフトしました(笑)。

楽曲自体はタイトルの激しさからメタルやハードコア寄りかと思いきやそんなこともなく、とても聞きやすいロックナンバーに仕上がっています。

MVはヴォーカルの奏多くんが加入して一本目のライブと言うことで、どことなく初々しさを感じます。
(2017年6月30日現在)26万再生を超え、注目度の高さが伺える作品です。 

03. 腐り姫

 zanyzapofficial/ぞんび「腐り姫」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.]】

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この曲がぞんびの名刺代わりの曲でしょうか。
ぞんびだけに「眠り姫」にかけて「腐り姫」と言うタイトルにしたのだと思いますが、腐ったお姫様を想像するとちょっと恐ろしいです(笑)。

昭和な雰囲気と言うか、かなり歌謡曲のテイストが強いキャッチーなミドルテンポのロックナンバー。
この曲の歌詞は元々前のヴォーカリストが書いていたため、ヴォーカルが現在の奏多くんになって書き直したみたいですね。
「くるくるくるくる回ります」という印象的なフレーズがあり、頭に残りやすいです。

演奏面では難しいことはしていないのですが、クラップ音を使用するなどライブで盛り上がれるように作られています。 

04. 「闇夜のセレナーデ」

 zanyzapofficial/ぞんび「闇夜のセレナーデ」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.]】

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1曲の中に物語的な拡がりがあり、王道のV系といった雰囲気がする曲。
タイトルにわざわざカギカッコをつけているのは、もしかしたらそう言った(物語のタイトル的な)意味合いがあるからかも知れません。

他の楽曲とは若干毛色が違う、シンセを効かせたロックです。

サビの重要な要素のひとつに「高音」があると思うのですが、この曲はサビ前のBメロで上げておいてサビで落として入るんですよね。で、そのまま落ち着かせるのかと思いきや、サビの中盤から終盤にかけて上げてまた落とす。
こう言ったジェットコースター要素のある楽曲はなかなか嵌め難いと思うのですが、とても巧く組み立てられていて作曲センスの高さを感じます。

そして初めて聴いたときは2番のドラムのドコドコ音に驚きました。速い(笑)。

サビのヴォーカルはファルセットを多用していて美しいです。
奏多くんは少し高音に弱いヴォーカリストなので、音域が広がるともっと良くなるのになぁ、と思いました。 

05. 四丁目アパート殺害事件

 zanyzapofficial/ぞんび「四丁目アパート殺害事件」live at 高田馬場CLUB PHASE 2016.5.22

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ストリングスが効いた一曲。
レトロでオシャレなメロディーラインの楽曲です。

タイトルの激しさ(?)とは裏腹に切ない歌詞です。
切なさに隠れた狂気に溢れていて、女性目線の「好き過ぎて殺してしまう」心境と描写がとても良く描かれています。

情景が浮かびやすい曲で、なんとなく夕刻の夕日に照らされた畳のアパートでのその光景が浮かびました。
実際はどのようなイメージなのでしょうか。 

06. マダム・フローレンスの人体調理講座

これまた凄まじいタイトルの曲ですね。

歌詞には人体の部位を解体して調理していく工程が綴られています。
正直あまり想像はしたくないです(スプラッタ苦手なので。苦笑)。
よくよく聴いていると、人体の下から上へと解体しているんですよね。順番も考えて歌詞を書いたのだとしたら凄いなぁ、と。

メロディーラインはタイトルや歌詞ほどおどろおどろしいものではありません。結構ポップです。
ところどころギターの弦を弾くことで楽曲にマッチした効果的な音を奏でていて、良いエッセンスとなっています。

07. 交響曲第9番「真夜中の第二音楽室」

 zanyzapofficial/ぞんび「交響曲第9番「真夜中の第二音楽室」」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.]】

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クラシックの要素を取り入れた軽快なロックでとてもかっこいい曲です。
流れるようなピアノの音色が、まさに交響曲(と言うか、協奏曲?)といった印象を受けます。

この曲もBメロでドラムのドコドコ音がスゴイ。とにかく速い。

世界観はタイトルにある通り、夜中の音楽室の奇妙な出来事を描いています。
ぞんび、と言うか幽霊的な感じでしょうか?

「ゆらゆらゆらゆら」という歌詞が印象的で、このバンドはそう言った独特のフレーズを入れるのが上手ですね。

ところで楽曲の軽快さに気を抜いていたら、MVのラストがリアルホラーでビビリました。

08. まっくら

ぞんびの中ではゆったりとした曲。バラード的な位置付けでしょうか。
アンダー寄りでダークな楽曲です。

短時間で出来上がったと聞きましたが、筆者はこのアルバムの中でもかなり好きな曲です。
メロディーラインは割と単調なんですが、奏多くんの歌い方が良い効果を与えています。

ちょっとBメロがありがちな音の展開と言うか、どこかで聴いたことがあるような感じがして惜しいんですよね。
あくまで筆者の好みですが、あと一歩で名曲になるのではないかと。

09. 夕闇行進曲

 zanyzapofficial/ぞんび「夕闇行進曲」live at 新宿ReNY 2015.11.29 

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ホラーな雰囲気を感じる音階でつくられた緩めのイントロから、Aメロで突然ハードな入り方をし、またBメロ前でローに落としてBメロをハードに。
一転サビはローに落として逆に間奏がハードと言う、とても不思議な構成の楽曲。

サビに向けて徐々にアッパーにしていくのがジェネラリティですが、「次はこういうメロだろうな」と言う脳内の曲構成予測を良い意味で裏切ります。
サビとイントロ、アウトロはまるで違う楽曲のようです。

イントロやアウトロの緩めのメロディラインは、さしずめ「ぞんびの行進曲」と言ったところでしょうか。 

10. アブノーマル・セラピー

 zanyzapofficial/ぞんび「アブノーマル・セラピー」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.]】 

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非常にノリの良いハードロックチューン。
こちらもドラムのドコドコ音が凄まじく、ドラムのアプローチをかなり重点的に考えて作られているように感じられます。
シンセやストリングスを多用するバンドですが、この曲はエッジの効いたギターや激しいドラムにしっかりとしたベースラインと、バンドサウンドを表に出した楽曲となっています。

MVではメンバーはV系お約束の医療系な装いで、どことなく懐かしさを感じます。
さらに外人の役者さんを起用したストーリー仕立ての作品で、一見コワイ系かと思いつつ笑えるつくりです。
ビビりなのでビクビクしながら観たら終盤吹き出しました(笑)。

ちなみに歌詞にはギャグ要素はなく、ハードめです。

ロックナンバーがお好きな方にはまずこの曲をオススメします。

11. リビングデッド・マーチ

こちらもハードサウンドのアッパーチューン。

Aメロからデスヴォイスを入れ、サビのヴォーカルにノイズ系のエフェクトを掛けるなど、ラウド寄りの楽曲に仕上がっています。
聴いたところライブで暴れる用の曲として作られているように感じます。

歌詞はちょっと意味が分からないです(笑)。

タイトルでマーチ(行進曲)と謳っていますが、どこら辺がマーチなのかいまいちパっとしません。
サビなのかな?

しかし「行進曲」2曲目。好きですね…(笑)。

12. 21世紀の精神異常者

これも独特なタイトルですね。

アッパー曲が2曲続きましたが、こちらはイントロは激しいですがサビは(前の2曲と比較すると)少し抑え気味につくられています。

しかしサビが単調でちょっと残念だなぁ、と。
サビ意外は結構刺激的な曲に感じるので、もう少しサビにインパクトが欲しかったです。

13. 墓場 de ラヴソング 

 zanyzapofficial/ぞんび「墓場 de ラブソング」【OFFICIAL MUSIC VIDEO [Full ver.]】 

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ぞんびでは珍しい頭サビのラブ(?)バラード曲。
(ミドルのように思いますが、恐らくぞんびの中ではバラードの位置付けかと。)
メロがしっかりしていて聴かせる楽曲として作られている感じがします。

タイトルに“ラブソング”とついていますが、一般的なラブソングの歌詞とは程遠く、ぞんび視点(?)のラブソングと言ったところでしょうか。
「ラリルララ」と言う印象的な歌詞が繰り返し出てきて、不思議なことにそこで切なさを感じられます。こう言った効果的なフレーズの使い方は相変わらず巧いですね。

イントロや間奏の音の組み方がぞんび感(ちょっと奇妙な死者の世界のような雰囲気)が出ていて面白いです。
アルバムラストながら、ストリングスやピアノの音を効かせたバンドサウンドが薄い曲を持ってきているのも興味深いですね。バンドなのに(笑)。

 

以上、ぞんび『ぼくらはみんな死んでいる。』の全曲レビューでした。

とにかくキャッチーな楽曲が多いので、ジャパニーズポップスが好きな方にはハマるのではないかな、と思います。
興味がある方は是非手に取ってみてください。

初のライブDVDリリース決定

7月19日にぞんび初のライブDVDのリリースが決定しています。
本作のアルバムを引っ提げて行ったツアーファイナルのO-WEST公演が収録されるようです。
気になる方はチェックしてみてはいかがでしょうか。
しかもライブDVDにしてはビックリするほどお安いですよ!(笑)

 zanyzapofficial/ぞんびワンマンツアー2017~全国完全感染~「ぼくらはみんな死んでいる。」@TSUTAYA O-WEST 2017.3.24 DVD告知動画
(※追記)
公式動画が削除されていたので、リンクを削除しました。


発売日:2017年7月19日(水)
タイトル:ぞんび ワンマンツアー2017~全国完全感染~「ぼくらはみんな死んでいる。」@TSUTAYA O-WEST 2017.3.24
価格:¥3,300+税
品番:EAZV-0150
形態:DVD1枚
収録時間:未定

【収録内容】
1. SE (アンデッド・ヒーロー)
2.「闇夜のセレナーデ」
3. 21世紀の精神異常者
4. 腐り姫
5. ハッピーハッピーグロテスク
6. - MC -
7. 夕闇行進曲
8. 墓場 de ラヴソング
9. -Bass&Drums Session-
10. まっくら
11. 餞の唄
12. - MC -
13. マダム・フローレンスの人体調理講座
14. 交響曲第9番「真夜中の第二音楽室」
15. 四丁目アパート殺害事件
16. 細菌マン
17. アブノーマル・セラピー
18. リビングデッド・マーチ

-アンコール-
19. En-1.にわか雨
20. - MC -
21. En-2.午前五時、絶望
22. En-3.死ねばいいのに。